実質利回りがいいから物件買った?売却のこと考えてる?

 今日は、実質利回り(もちろん、表面利回りも含む)が良くても損をする可能性があるという話をしようと思います。損する理由を簡単に説明すると、売却した時に今までのトータルの家賃収入よりも物件の価格が下がっているからです。そして、この売却時の損失も加味した投資指標(MIRR, IRR)の紹介もします。
 今までの話を聞いて、「あー、あれのことね。」と思う方は読む必要ないと思います。でも、「え?!どういうこと」と思っている方には読んでおいて損のない内容です。この内容は、不動産投資の本などで言及されていることが非常に少ない内容です。特に、地方のボロ戸建てをしようとしている方は知らないと地獄を見る内容なので絶対読んでください。では、いきましょう!

不動産の利益っていつ確定する?

 不動産投資の利益の確定がいつするかというところからスタートします。不動産投資では、家賃をもらっている時には本質的には利益は確定していません。利益が本質的に確定するのは、不動産を売却して売却額とトータルの家賃収入が決まった時です。例を使って考えていきましょう(イメージを掴んでいただくため、かなりあり得ない設定、かつ簡略化されすぎた計算です。ご了承ください。)。
 例えば、1億円の物件を買って、10年持っていました。1年間に家賃が1000万円入ってくるとします。つまり、表面利回りは10%ですね。10年後売却する時に、0円で売却したとします。そうすると、1000万円×10年(トータルの家賃収入)ー1億円(売却損益)=0円(10年間の実質的な利益)。1億円を10年間運用したのに、利益はなしとなります。これでは銀行口座に入れておいた方が手間も考えるとだいぶマシですね。
 別の例を考えましょう。同じく1億円で物件を買って、10年間持っていたとします。1年間に0万円の家賃収入だとしましょう。つまり、入居者がいないのですね。10年後2億で売却できたとしましょう。すると、0万円×10年+2億円=2億円となります。表面利回りは0%となっており、そこだけ見ると最悪の物件です。しかし、トータルで見ると利益が出ていて、少なくとも前の例よりは遥かに良い不動産と言えます。
 このように、不動産投資の利益は、売却の時に初めて分かります。
上記の例を表面利回りで見ると、1つ目は10%,2つ目は-1%ですが、1つ目の例の方が優れた投資と思う人はいないですよね。つまり、表面利回り(、実質利回り)は 、投資のパフォーマンスを測る指標として不十分なのですね。
 ちなみに、上記の1つ目の例は、売却価格が0円であり得ない話をしてると思われる方もいると思います。しかし、実際には、タダでないと売却できない、それどころかお金を出すと言っても引き取り手がいない物件は少なくありません。

実質利回りに代わる投資指標:IRR

 (表面利回りが当てにならないのはもちろんのこと、)実質利回りでさえもが当てにならないことがわかったと思います。では、私たちは何を指標に不動産投資の成否を評価すればいいのでしょうか?過去に同様に考えた人がおり、有名な指標があります。IRRと呼ばれて、トータルの家賃収入と売却損益の和を期間で割ります(詳しくは、IRRで調べてみてください。実際にはEXCELなどで自動で計算してくれるため、最悪詳しい計算式を知らなくても大丈夫だと思います。)。
 ちなみに、IRRは家賃収入を再投資しない設定で計算されています。しかし、実際には、家賃収入は再投資する場合がほとんどです。ということで、再投資する設定で計算する投資指標もあり、MIRRと呼ばれます。

まとめ:実質利回りに踊らされずに、IRRで正確に投資パフォーマンスを判断しよう。

 今回は、不動産投資のパフォーマンスとして目を向けられがちな実質利回りの欠点と、その欠点を補う投資指標:IRR,MIRRについて紹介しました。不動産投資は、「売却して現金化するまで成功したかどうか分からない」と聞きますが、この言葉の意味は売却損益も考えろということだったのですね。当たり前ですが、投資の利益(本質的な利益)は、キャピタルゲイン(家賃収入)とインカムゲイン(売却損益)の2つによって構成されるということです。

補足:特にボロ戸建ては出口のことをきちんと考えておく必要アリ

 今回の話で不動産投資は実質利回り、表面利回りは本質的な意味での利回りではないということがわかったと思います。最近、不動産投資業界では、ボロ戸建てが流行っています。ボロ戸建ては利回りが高く魅力的に語られますが、売却時の話を積極的にしている方は見たことがありません。なので、ボロ戸建てに興味のある方で、売却時のことも想定している人は非常に少ないと思います。まずは、第一歩として「実質利回りをあげればその不動産投資は大成功ということでは必ずしもない」ということを知っておきましょう。
 ちなみに、ボロ戸建てを実際にしている人の売却スタンスは「表面利回りだけを追っている人が一定数いて、30%とかにすると売れるから売却できる」だそうです。自分もボロ戸建て興味がありますが、まだ出口戦略については確信が得られていない感じがあります。また、自分なりのボロ戸建て出口戦略が確立されたらシェアしますね。それでは。